「知らない伯父さんの固定資産税?」から始まる相続放棄の話
ある日、ポストに見慣れない封筒が。
「○○市役所」と書いてあって、中身を開けたら――
『あなたは伯父様の相続人代表です。固定資産税をお支払いください。』
……え? 伯父? 誰? こっちは顔も知らないんですが。
でも役所がこういう通知を出してくるということは、戸籍上あなたが法定相続人になっている可能性が高いということ。つまり、あなたの知らないところで“相続”が始まっているわけです。

そのとき選べるのは2択
- 相続人として固定資産税を払う(=単純承認)
- 家庭裁判所で相続放棄の手続きをする
①払って済むと思ったら、意外と深い沼
固定資産税を払えば不動産が自分のものになる――と思いがちですが、実は違います。
相続人が他にもいれば、遺産分割協議をしなければなりません。
しかも、財産は土地や建物だけじゃない。預貯金、株、借金…いろいろ付いてきます。
亡くなった方がどんな資産や負債を持っていたか調べるのは、探偵レベルの労力が必要なこともあります。
②相続放棄で“きっぱり他人”に戻る
「そんなの調べてられない」「知らない人の借金まで背負いたくない」
――そんなときは相続放棄を選びます。
ただし、「役所に放棄します」と言うだけではダメ。
家庭裁判所に正式な申立てをしなければなりません。
そして期限があります。
相続の開始を知った日から3か月以内。
今回のようなケースでは、通知書を受け取った日が“知った日”になります。
この3か月の間に放棄の申立てをすれば、不動産に関する責任も負いません。
以前は「管理責任」が問われることもありましたが、最近の法改正で占有していない限り管理責任はないことになりました。
放棄を選ぶときの鉄則2つ
- 3か月以内に手続きすること
- 相続財産に一切手を付けないこと
預金を下ろしたり、家の中を片づけたりしたら、それだけで「相続を承認した」と見なされる可能性があるので注意。
そして一番怖いのは、借金
不動産の固定資産税ぐらいなら何とかなる――と思って相続したら、
後から消費者金融から数百万円の請求が届いた、なんて話も実際にあります。
一度相続を承認すると、もう「やっぱり放棄します」は通りません。
だから、よく分からない相続ほど、安易に手を出さない方が無難です。
知らない相続は“とりあえず放棄”が安全策
縁遠い親戚からの突然の相続通知は、たいていロクなサプライズではありません。
財産よりも、後始末や借金のほうが多いこともしばしば。
なので――
「知らない伯父さん」からの相続は、まず落ち着いて、そして3か月以内に動くこと。
放棄の手続きは少し面倒ですが、後から借金を背負うよりずっと軽いです。
なお、裏技的なものとして”限定承認”や”熟慮期間の伸長”という方法も場合によっては選択肢に出てきますので
気になる方は、早めに司法書士や弁護士に相談をして下さいね。
放っておいて3か月たったら否応なしに承認したものになっちゃうから。


