相続が発生したら…

 ご家族の方が亡くなると、その時点から相続が発生します。
 悲しみに暮れる暇もなく葬儀・埋葬が終わり、一息ついた頃から、様々な相続手続きに対応しなければなりません。
 具体的な手続きとしては以下のようなものがあります。
・市区町村での手続き
 …世帯変更届(住民票)、健康保険・介護保険喪失届、葬祭費・高額療養費支給請求
・税務署での手続き
 …準確定申告、相続税申告
・年金関係の手続き
 …国民年金受給者死亡届、未支給年金・遺族年金・寡婦年金・死亡一時金・共済年金支給請求
・保険、金融機関での手続き
 …生命保険・労災保険受取請求、預貯金口座・クレジットカード・株式有価証券の名義変更解約
・その他名義変更解約
 …不動産・自動車・公共料金(電気ガス水道)・電話・NHK・賃貸借・各種サービス利用会員

まずは相続人の確定から

 相続が発生してから最初に行う必要があるのは、法定相続人が誰であるか調査しなければなりません。
 相続手続きには、
①相続人のうちの一人が単独でできるモノ
②故人から予め指名されている執行者ができるモノ
③法定相続人全員で行う必要があるモノ、があります。
 特に一番手続きを煩雑にしているのは、③の法定相続人全員で行う必要があるモノです。
 法定相続人というのは、当事者の意思に関係なく、法律上当然に戸籍の繋がりによって決められています。
 そのため、相続人を確定させるためには、亡くなった方(被相続人)の”出生から死亡までの戸籍”を全て取得する必要があります。
 戸籍は法律が改正されたり、本籍地を移転する度に新しく作成されるので、死亡の記載のある戸籍=最新の戸籍、から遡って閉鎖された戸籍を取り寄せる必要があります。(閉鎖された戸籍はその時の本籍地の市町村で保管しています)
 人によっては明治時代前後に作られた古文書みたいな戸籍が出てくる方もいます。
 だいたい80歳の方ですと3~5通の戸籍が出てきます。
 

相続財産の調査

 相続人が確定したら、次は相続財産の調査を行います。
 相続財産には亡くなった人(=被相続人)が生前有していた不動産・動産・預貯金・有価証券といったプラスの財産のほか、借金や借入金などのマイナスの財産=負債も含まれます。
 また、相続人が受け取る生命保険金は、”みなし相続財産”として相続税の計算に使います。
 

相続放棄とは

 前述したように、法定相続人は戸籍の繋がりよって決まります。
 そのため、全く知らない人や、関わりたくない人の相続人となっているがあります。
 また、相続財産を調査した結果、マイナスの財産が多くて相続しても負債を背負うだけで損、財産は多少あるけどそれを取得するために多大な費用がかかるのでいらない、といった状況もあります。
 この場合に、法定相続人から外れる権利のことを「相続放棄」といいます。
 これは”私の相続分はいらないよ”という意味での放棄ではなく、”私を法定相続人から除外して下さい”という意味です。
 相続放棄をするとその人は法定相続人から外れ、それ以降相続財産とは無関係となります。
 これにより、新たに別の親族が法定相続人となることがあります。
 逆に相続放棄をしないまま放っておくと、故人の借金の弁済を強いられることがあります。
 この放棄は「相続発生から3か月以内」に家庭裁判所に申述する必要があるため、この期間を過ぎてしまうと相続放棄が認められないことがあります。
 また、相続放棄する前に相続を承認する行為(相続財産を受け取ったり処分したり)をしてしまうと放棄ができなくなる怖れがあるため、早めにご相談ください。
 


遺言書の有無

 相続財産の調査と並行して、故人が残した遺言書があるか調べます。
 遺言書がある場合、遺言書の内容に従って財産を分配することになります。
 遺言書に財産の有無が書かれていることも多いため、相続財産の調査がしやすくなります。
 遺言書を発見した場合、その遺言書が自筆証書か公正証書によって対応が異なります。
 公正証書の場合は、そのまま手続きを進めて構いませんが、自筆証書の場合、手続きが増えます。
 自筆証書が封筒等に入っており、封がしてある場合は封を破かないでください。
 知らずに封を破ってしまい自筆証書が出てきた場合は、封筒ごと保管しておく必要があります。
 自筆証書遺言は家庭裁判所による「検認」という手続きが必要となります。
 ”これは遺言書である”ってことを家庭裁判所が認定します。
 検認することにより、第三者に対してこの遺言書として有効なものだと主張できます。
 なお、法務局に預ける「遺言書保管制度」を使った自筆証書遺言なら検認の手続きは不要です。
 法務局で預かるときに遺言書だと確認しているからです。

遺産分割とは

 遺言書がなく、相続人が複数いる場合、
 相続財産をどう分配するかを相続人皆さんで決めることができます。
 特に何も決めない場合は法定相続分に応じて分配されることになりますが、通常は相続人全員で「遺産分割協議」を行います。
 遺産分割協議の内容は、相続人全員が承諾した内容であればよく、「全財産を○○が相続する」とか、「A不動産は○○、B不動産は△△、預貯金は□□が相続する」など、自由に相続財産を分けることができます
 協議がまとまれば、その内容を書面にし(遺産分割協議書)、相続人全員が記名押印し各々の印鑑証明書を添付することによって、
 以降、この遺産分割協議書に従って遺産整理を行っていきます。
 話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停手続きを行うこともできます。

法定相続情報証明制度とは

 各種相続手続きを行う際、まず”自分が相続人である”ことを証明しなければなりません。
 相続人であることを証明するものは戸籍です。
 故人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍+相続人各人の現在戸籍が必要となるのですが、各機関ごとに相続証明として戸籍一式を用意して持ち運ぶのは大変費用と手間がかかります。
 そこで、「法定相続情報一覧図」という一枚の紙により被相続人の相続関係を証明してくれる制度が誕生しました。
 これにより、年金事務所、税務署、不動産登記、保険・金融機関での手続きを行う際に、戸籍一式を用意する代わりに、法定相続情報一覧図を持っていけば良いことになりました。
 また複数発行できるため、並行して様々な手続きを進めることができるようになりました。


当事務所では、相続手続きのサポートをいたします。
・戸籍・住民票・評価証明書の取り寄せ
・不動産名義変更、口座解約、相続財産の承継
・相続放棄手続き
・遺言書の検認サポート
・遺産分割協議書作成支援
・法定相続情報証明制度

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外部リンク
裁判所>遺言書の検認
裁判所>相続の放棄の申述
法務局>法定相続情報証明制度