遺贈するのに住民票って必要?

遺贈とは… 遺贈(いぞう)とは、遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を受遺者(財産をもらう人)に譲渡することです。 

「遠くの親戚より近くの他人」といったように、身近な人に恩を感じることがあったりして、“良く知らない親戚に財産を渡すよりも、(生前)親切にしてくれたあの人に財産を渡したい”なんて思う人はけっこういます。

また、親子関係が破綻している場合など“あいつに財産を渡すくらいなら、慈善団体に全部寄付するわ“という方もいます。

そんなときは、遺言書を作成しておく必要があります。
で、その遺言書の書き方なのですが、基本パターンは以下のようになります。

第〇条 遺言者は、遺言者の所有する下記の不動産その他一切の財産を、
A田B子(昭和○○年○○月○○日生、住所:青梅市○○○町一丁目2番3号)に遺贈する。

             記
                     所在 東京都青梅市○○○町
                     地番 123番地4
                     地目 宅地
                     地積 50.00㎡

第〇条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として前記A田B子を指定する。

令和3年10月4日
住所 東京都青梅市○○町123番4
遺言者 X山Y夫 ㊞
昭和〇年〇月〇日生

 この遺言書を書くときの注意として、“受遺者を特定する“必要があります。
もし親族の誰かに遺すのであれば「長女○○に相続させる」との書き方で特定できます。
 が、相続人以外だと名前だけでは特定するのが難しくなります。
「友人のA田B子に遺贈する」なんて書いても、このA田B子さんが、具体的に誰のことを指しているのハッキリしないから。
 もちろん、“たぶんあの人のことだろうな“と推測は可能。
でも確実にこの人だと特定できなければ財産を引き渡すことは不可能。
 そこで受遺者の住所・氏名・生年月日を遺言書に記載して個人を特定する必要があります。
正確な住所・氏名・生年月日を知るために、住民票が必要となります。


 なお、遺言書作成した後に引っ越しなどして住所移転したり、婚姻等で氏名が変わっても、遺言書作成当時の住所・氏名で個人を特定し、そこから今の住所・氏名への繋がりは証明できるのでわざわざ遺言書を作り直す必要はありません。

 ちなみにマイナンバーで特定するというのは(今のところ)NGです。
マイナンバーの利用目的に該当しないため、マイナンバーを他の人が見ることができないからです。
※そのため住民票を取るときは「マイナンバーの記載なし」でとる必要があります。

 ついでに遺言執行者の説明をしておきます。
 遺言執行者とは、遺言書に書かれている内容を実現するための手続きを任された人のことです。
 遺言執行者を決めておくと、遺言執行者が相続財産の移転にかかる各種手続きを行います。
遺言執行者を決めておかない場合は、相続人が各種手続きを行うことになります。
 ここで受贈するということは、「相続人には財産はやらん!」といっているようなものです。
特に関係が拗れている場合、相続人がわざわざ手続きなんかやってくれません。
 そこで、相続人に代わって手続きを行う遺言執行者を決めていく必要がでてきます。
遺言執行者は別に誰でもよいので、実務的には受遺者を遺言執行者にすることが多いです。
自分が受け取る財産の手続きなんだから自分でやれるのが一番だよね、ってことで。


 受贈する意思があるときは、あらかじめ受遺者に承諾を取ってほうたほうがいいです。
サプライズで遺産を貰って喜べるのはドラマの世界だけ。
実際は遺言者の親族から恨まれたり面倒ごとに巻き込まれたりすることもあるので、ちきんと確認・承諾を得てから遺言書を書くようにしましょう。