終活って何?
終活とは、人生の終わりに向けて、最後まで自分らしい人生を送るための準備のことをいいます。
死ぬ準備とはちょっと違いますが、自分の死と向き合い、限りある時間と財産をどう使うか、どう生きていくか、何を遺すか、何を託すか等を決めることです。
死という逃れないゴールに向かって、いかに自分らしく有意義に進んでいくか、途中で迷わないように道しるべを作ります。
なんで終活をするの?
”今は元気で自分のことは自分で決められるし、予定も立てられる、管理もできる、死ぬことなんて考えたくない!って思うのが普通です。
”とりあえず保険も入っているし、何とかなるだろ。その時は、その時になってから考えよう”と、死という嫌なことを考えるのは後回しにして、今を大いに楽しもう…というのが(私も含めて)大多数の人の考え方です。
でも実際は、いざその時になったら、そんなこと考えたり決めることなんて出来ないものです。
理由は準備不足と決断力の低下、その時になってからでは残念ながら遅いのです。
切羽詰まった状態では正しい判断はできませんし、うまく伝わらないことが多いです。
「余裕のあるうちに、あらかじめ決めておく」ほうがより理想的な選択ができるかと思います。
終活って何をするの?
終活としてやること・決めることは主に次の3つです。
1.これまでの人生と、これからの人生について
…生前整理とこれから為すべき事への準備
2.いざとなったとき、自分は何をどうしてもらいたいか
…何かあったときの対応、手段、連絡先をまとめておく
3.自分の死後どうするか
…葬儀やお墓、遺言作成
1.これまでの人生と、これからの人生について
これからの人生を決めるためには、今現在の自分の状況を把握することが大切です。
今の自分に有るモノ無いモノ、これから必要となるモノ、いらないモノ…このように整理することで、これから何をしたいか何ができるか、を考えることができます。
こういったモノを整理することを「生前整理」といいます。
過去を振り返りつつ、これからの人生においていらないモノは処分し、残ったモノについて財産目録をつくり自分の今の財産を確認します。
生前整理は一般的に「断捨離」と呼ばれている事と似ていますが、決定的に違う点があります。
それは生前整理を行う際には「遺産相続」についても念頭に置かなければなりません。
残すものは将来、誰かがひき継ぐもの=「相続財産」となります。
自分のことだけでなく、遺された家族や親族のことも考えながら、「これは残してても迷惑だから今のうちに処分しておこう」「これは形見として残しておこう」「今のうちに○○さんに渡しておこう」等々。
今ある財産が把握できたら今後の収入支出を計算し、限られた時間や財産のもと、これからできる事やりたい事を見つけていきましょう。
2.いざとなったとき、自分は何をどうしてもらいたいか
長く生きていると、どうしても自分の意志では避けられないこともあります。
もし事故にあったり病気で倒れたり、だんだん呆けてきて今とは違って正確な計算や判断ができなくなってしまったときに、
自分の扱いについてどうして欲しいのか、ってのをあらかじめ決めておきます。
そのため今の健康状態や、かかりつけ医や病院、終末期の医療やケアの方針、ペットの世話や知人への連絡、生活費の支払い等、自分の代わりにしてもらいたいこと等…
あらかじめ指示書(お願い)をつくっておくと、自分らしく生きられると共に、ご家族や知人などに余計な負担をかけずに済みます。
特に終末期医療については、ご家族に決断させることはかなりの負担を強いることになるので、自分らしい最期はどう迎えるのか一番幸せか、どうして欲しいのか等、あらかじめ紙に書いて意思表示しておくとようでしょう。
このような情報をまとめたものがエンディングノートとなります。
エンディングノートを書いておくことで、将来、自分で意思表示が難しくなったときに、自分の意思を医療・介護・生活を支える専門家に伝えることができます。
また、自分で判断することが難しくなってきたときに備えて、任意後見制度を利用するという選択肢もあります。
任意後見制度とは、将来、自らの判断能力が低下したときに、自分の財産管理や介護サービス締結等の療養看護に関する事務手続きを代わりにやってもらう人を決めておく制度です。
代わりにやってもらう人のことを任意後見人といいます。
任意後見人になってもらう人に依頼し、任意後見契約を結びます。
この契約は公証人を交えて行い、登記されますので強い強制力を持ちます。
任意後見は本人の様子を見ながら任意後見を始めたほうが良さそうな状態になった時に裁判所に任意後見監督人の選任の申立てを行って始まります。
その後は、任意後見人が当初の任意契約で結んだ内容で本人の代わりに事務を行います。
そして、任意後見人がしっかり事務を行っているかを、裁判所から指名された後見監督人が本人に代わってチェックします。
その反面、後見監督人への報酬が発生しますので費用(月1万円~)が発生します(任意後見人への報酬は無償・有償かを当初の契約時に決めておきます)。
3.自分の死後どうするか
そして、自分が亡くなった後のことを決めておくとよいでしょう。
何も決めていないと、後に遺された遺族があれこれ決めたり判断しなければならず、方針や分配をめぐって遺族間でいらぬトラブルが発生することがあります。
そんなことになったら安心して永眠もできません。
まず自分が亡くなったことを誰に連絡してほしいか、自分に宗派があるのか、葬儀はどういった形式で行いたいか、納骨やお墓はどうするのか、といった祭祀に関することと、残っている財産についての処分をどうすうかといった相続に関することを決めておくと良いでしょう。
とくに相続財産の処分については、「遺言書」という法的効力のある形で残しておくことで、遺された遺族に余計な負担をかけずに相続財産を継承することができます。
遺言書作成について
遺言書とは、自分の死後、遺産をどのように分けるか等を記載した法的拘束力のある文書です。
遺言書があるかないかで、相続手続きの煩雑性が多いに違ってきます。
遺言書がない場合、相続手続きには法定相続人全員が協力して行わなければなりません。
この法定相続人というのは、戸籍の繋がりで判断されます。
そのため、遺族間で普段付き合いがないどころか全く面識のない人が登場してきたりして、複雑かつ面倒な手続きとなることもあります。
一方、遺言書がある場合、遺言書の指示に従って遺言執行者が手続きを行えば済むので、残された者の負担は大分軽減されます。
そのため、とくに相続間トラブルが発生する恐れがなくても遺言書一枚あるだけで遺族は大変助かる事になります。
遺言書には大きく分けて2種類あります。
自分の手で書く自筆証書遺言と、公証人が作成する公正証書遺言です。
自筆証書遺言は、ペン等を使って(パソコンで作成して印刷はダメ)自分で書く必要があります。
さらに検認手続きが必要になります。
自分の死後に、この遺言書が有効なものであることを、裁判所で認めてもらう手続きのことを「検認」といいます。
検認手続きは相続人が行います。
ただし、遺言書を法務局に預ける「遺言書保管制度」を使えば検認の必要はなくなります。
この制度は、生前自分が書いた遺言書を法務局に持参し、自分の死後、法務局から受遺者に対して遺言書の内容が伝えられるという制度です。
法務局が預かるときに遺言書の形式が有効であることを確認するため、検認の必要がなくなります。
公正証書遺言は、遺言書に書きたい内容を公証人に伝え、それを元に公証人が書面を作成します。
この書面に遺言者と証人2名(相続人は証人になれません)が署名押印すると有効な書面となり、公証役場で原本を保管することになります。
公証人が間に入って作成するので、検認の必要がなく、また文書としての証明力が強くなります。
遺族間でもめ事が発生しそうなときは、公正証書遺言で遺言書を作成しておくことで、トラブルを回避することができます。