ペットに財産を相続させる、ってできるの?

 

 高齢者でペットを可愛がって飼育している人は多いです。
本当に家族のように可愛がっているペットたち、でも気がかりもあります。
◇今後、もし自分がこの子たちの世話をできなくなったらどうしよう?
◇もし自分が先に死んだらこの子たちはいったいどうなっちゃうの?
 今の時代、人間も長生きしていますが、食事や環境がいいのでペットも長生きします。

 犬猫ちゃんで15~20年、長寿ペットの代表格のオウムになると50~70年。 自分が亡くなった後のペットの生活が心配、自分が亡くなったら自分の財産をペットの世話代に使って欲しい、というの人の生前対策としては何ができるでしょうか?

ペットへ直接財産を相続させることはできない

 ”ペットは大切な家族!”という気持ちは大変わかりますが、残念ながら法的には「動産」扱いになります。
民法上の権利義務の主体にペットはなれませんので、相続権もありません。(動物愛護的な権利とは別の話しです)
 じゃあ、どうすればペットに財産を残せるの?
直接ペットに財産を渡すことはできないけど、間接的に財産をペットの世話代に使える方法が2つあります。


1・世話してくれる人に財産を渡し、ペットの世話をしてもらう負担付遺贈・負担付死因贈与契約

 負担付遺贈というのは、「ある人に○○を(してもらうことを)条件に財産を遺贈します」というもの。
ペットの負担付遺贈だと、「残されたペットの世話をしてもらうことを条件に、世話を引き受けてくれた人に財産を残す」となります。
世話してくれる人に財産を渡し、”その財産でペットの面倒みてね”、というお願いです。
 これは遺言書にその旨を書いておく必要があります。また、あらかじめ世話を頼める人を見つけておく必要も。

 負担付死因贈与契約というのは、内容は負担付遺贈と同じですが、遺贈は遺言書に一方的に書くのに対し、こちらは贈与契約ですので、あげる人ともらう人との間で合意契約が必要になります。
 契約自体は口頭でも成立しますが、後のトラブルを避けるためには書面で残しておいた方が良いです。
 

2・信託制度を利用する(ペットの信託)

 また、遺贈とは別にペット用の財産を「信託」し世話をまかせる、という方法があります。
信託とは、財産を第三者へ預け、その人は信託内容に従って財産を管理する、というものです。
 ペットの信託なら、
①飼い主(=委託者)と財産を管理する人(=受託者)の間で信託契約を結ぶ
②信託が開始したら、受託者はペットを世話する人(=受益者)を見つけてペットの世話を頼む
③受益者は受託者から費用をもらいながら、ペットの世話をする
というのが基本スキームです。

負担付遺贈と信託、どっちがいいの?

 負担付遺贈(負担付死因贈与)だと、あくまで飼い主さんが亡くなった後からの話です。
また、実際にペットの世話をしてくれるか確認できないため、任せる人との信頼関係がかなり重要です。

 一方、信託制度を使う場合は、信託開始時を選べるので、ご自身が亡くなる前でも始めることが出来ます。
具体的には「認知症になったら信託を開始する」というものです。
また、ちゃんと財産を管理しているかチェックする”信託財産監督人”という人を別に定めることができます。
 チェックする人が多い分かなり確実にペットの世話については安心できますが、その分費用が高くつきます。


 どちらも一長一短ですので、ご自身の都合の良い方を選んでペットのための生前対策をとっておきましょう。