不動産贈与の配偶者控除(おしどり夫婦控除)って本当にお得?
先日、不動産登記の相談である夫婦が来られて、不動産贈与の配偶者控除について相談がありました。
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私たち、結婚して早20年以上たちました。
夫の名義である今住んでいる家を妻にあげると
「贈与税はかからない、相続税対策になる」
と聞いたけど、どういうこと?
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「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」の特例のことだね。
通称「おしどり夫婦控除」って呼ばれているやつで、普通なら夫婦間でも不動産の名義を変えると、贈与税がかかります。
けど、この特例を使うと2000万円までは贈与税はかかりません。
また、夫が亡くなったときも、すでに家の持ち主は奥さんになっているから、相続の対象にもならないので、相続税対策にもなる。
贈与税も相続税もかからないで不動産名義を変えられる、素敵な制度だよ。
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だれでもこの制度つかって贈与できるの?
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この制度が使える条件ってのはいつくかあるけど
要は、”居住用財産(を購入する資金)を結婚20年以上の夫婦間で贈与する”ってことだね。
その他の細かい条件はこちら
国税庁・ 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm
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じゃあ、今すぐ夫から妻へ不動産贈与したほうが税金払わなくて済むから、お得ってことでOK?
さっそく妻に名義変更しよう!
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ちょっと、待って!!
節税の為だけに、この制度つかうと返って損するかもよ?
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え!?なんで、贈与税も相続税もかからないんだからお得じゃないの?
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たしかにその2つの税金はかからないんだけど、税金はそれだけじゃ終わらないのよ。
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まず、不動産登記の名義変更にかかる不動産登録免許税。
こちらは、相続で移転した場合は不動産評価額の0.4%かかるんだ。
一方、贈与で移転した場合の登録免許税は2%、単純に5倍増えるよ。
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次に不動産取得税がかかります。
こちらは相続で取得した場合はかからないけど、
贈与で取得し場合、不動産評価額の3%(特例)かかる。
つまり贈与税はなくても、他の税金は発生することになるんだ。
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でも相続税が掛かるんじゃ、やっぱ贈与のほうがいいんじゃない?
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本当に相続税が掛かるならね。
まずは自分たちが相続税を払う必要があるか計算してみよう。
まずは概算で
相続財産合計額-基礎控除3000万円-(相続人×600万円)
まずこれで0以下になる場合は、そもそも相続税を払う必要もないし申告する必要もないんだ。
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さらに、相続税には次の2つの減免規定があるの。
①夫婦間の相続は1億6千万まで非課税…配偶者が受け取る相続財産のうち1億6000万円分までは相続税がかからない
②小規模宅地等の評価減…住居に使っている不動産の評価額を80%減額できる
この2つにより、申告はいるけれど、実際には相続税を払う必要がない場合が多いんだ。
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そうなの?さすがに私たちの財産は1億もないから相続税の心配はいらないね。
相続税対策にならないんじゃ、この制度って何かメリットあるの?
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相続税対策としては意味がないどころかデメリットになることが多いね。
でも、例えば
・自宅を売却することを考えている
・所有者が高齢でこのままだと認知症になる
・20年連れ添ってくれた妻への感謝の気持ちとして贈与する
など別の理由があれば、検討してもよいと思いますよ。
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わかりました。
特にそのような事情がなければ、わざわざ配偶者控除をつかってまで贈与する必要ないってことですね。
簡単に不動産贈与の配偶者控除のメリット・デメリットを説明しましたが、実際の税金の計算等は税理士さんにご相談ください。
もちろん、相続税対策以外の面でこの制度を利用している方も多いです。
そのときは、登記手続きを当事務所へご依頼いただけると嬉しいです。