遺言書をつくろう①自筆証書遺言書と公正証書遺言書の違い
遺言書には大きく分けて2つあります。自分で書く自筆証書遺言書と公証人が作成する公正証書遺言書。
まずはこの二つの違いから確認していきましょう。
最近、役所に行ったときに「自筆証書遺言書保管制度」のポスターがはってあったんだけど。
これってどういう制度なの?
そもそも遺言書とかって、書いておく必要あるのかな?
うちは大富豪でもないし、そんな遺産でもめることはないと思うし、亡くなった後のことを考えるなんてなんか怖いし。
まず、遺言書は書いた方が良いかどうかというと、断然書いておいた方がいいよ。
たとえ揉めるほどの財産がなかったり、家族間で争いはないと分かっていても
遺言書があるとないとじゃ、亡くなった後の相続手続の煩雑さが全く違うので。
亡くなった後のことなんて考えるの面倒だし、後のことは家族に任せておけばいいんじゃない?
それに相続財産っていったって、うちには自宅と銀行に預けている預金くらいしかないけど。
う~ん、ダメってわけじゃないけど…
亡くなった後に家族がしなければいけないことはたくさんあるけど、
相続手続きだけみても貴方の場合は自宅の土地建物の不動産登記の名義変更と銀行口座の変更・解約が必要になるね。
これらの手続きは基本的に相続人全員で行なわないといけないし、必要書類も沢山用意しないといけない。
これが遺言書があるとかなり手続きは楽になるんだ。
残された家族の負担をなくすためにも遺言書は書いたほうがいいね。
そういわれると、亡くなった後に家族に迷惑はかけたくない気もしてくるな。
でも、そもそも遺言書にはどんなのがあるの?
自分で好き勝手書いていいものなのかな。
遺言書はそれが使われるときは書いた人は亡くなっているから、内容について本人に確認したりすることができないよね。
そのため、遺言書については民法で定めらえている種類や形式を備えているモノじゃないと有効とは認められないんだ。
遺言書にも種類があるのか。自分はどういう種類の遺言書を作ればいいんだろ?
遺言書には大きく分けて2種類あるよ、自分で書く自筆証書遺言書と公証人が書く公正証書遺言書。
自筆証書遺言書は自分で書くんだけど、形式的要件(手書・日付・署名捺印)を揃えていないと遺言書として認められないんだ。
一方、公正証書遺言書は書きたい内容を公証人の先生に伝えて代わりに先生が書類を作成してくれるもの。専門家がつくるから形式的に無効となる心配はないね。
また、自筆証書遺言書は自分一人で作るので、その正当性が問題になることがある(内容の正しさや改ざん・偽造の疑い)けど、公正証書遺言書には公文書なので信ぴょう性が高いと言える。
だから、自分の手でもう文字を書くのが難しくなっていたり、後に相続で揉める心配があるときは公正証書遺言書で作っておいた方が安心だけど、そうでないなら自筆証書遺言書、ってとこだね。
自分で書くなら自筆証書遺言書、自分で書けなかったりトラブルを回避する目的で書くなら公正証書遺言書ってことね。
遺言書に関しては代筆はできないので、自筆証書遺言書は必ず自分で書かなきゃいけないね。
自筆証書遺言書は、自分一人で作ることができるので作ろうと思えばすぐに作れるけど、
公正証書遺言書の場合、公証人と証人2人の立会が必要になるので、その分手間と費用がかかるね。
遺言書の内容としては何書けばいいんだろ?
遺言書に書く内容は自分の財産を自分の死後どう分配・処分するかについてだね。
自分の財産を誰か一人に全部あげてもいいし、具体的に長男にはこれ、次男にはあれ…など分け方を書いてもいい、相続人ではない人にあげてもいいし寄附してもいい(遺贈)。
遺贈の場合は遺言執行者も決めておくと手続き的にはかなり楽になるね。
自筆証書遺言書の場合、文章は手書きで書かなきゃいけないんだけど、財産目録については手書きじゃなくても良くなったんだ。
なので財産目録としてPCで作成したものを印刷したものや、銀行通帳の写し、不動産登記事項証明書などを遺言書に添付しても大丈夫。
逆にこれ以外のこと(葬儀や埋葬の仕方や世話になった人への伝言など)は書いても法的には意味のないものになるよ。
だから葬儀や埋葬の仕方については、別に決めておく必要があるね。
書く内容は財産か…あんまり自分の財産って他の人に知られたくないんだよな。
遺言書は生前にその中身を他の人に見せる必要はないんだ。
本人の希望無しには中身を誰も見れないことになっているから。
ただ、逆に本人があらかじめ譲る相手に教えておくのはOK。
特に揉めない相続の場合は、あげる相手には事前に伝えておいたほうがいいね。
遺言は一方的な意思表示なので、相手の承諾はなくてもいいんだけど
やっぱ両者納得の上のほうが安心だよね。
ちなみに、遺言書に書いてあるからといって絶対的に効力が発生するわけじゃなく
譲られた人が拒否(放棄)してしまえば遺言書はなかったものになるからね。
書いた遺言書ってのはどう保管しておけばいいの?
自筆証書遺言書を封筒に入れて封をおくと他の人はその封を破いてはいけない、っていう決まりはあるくらいで、保管の方法については特に決まりはないね。
自筆証書遺言書だと、金庫や貸金庫に預けていたりすることが多いかな。もちろん自分で持っていてもいいし、信用できる人に預けておくものいい。
ただ原本は1通しかなく、その原本を紛失したらいくらコピーがあってもダメなんだ。
そういう意味では自筆証書遺言書保管制度を使って法務局に預けておくのが一番安全だね。
原本を国の責任でしっかり保管してくれるから。
公正証書遺言書も同様、原本は公証役場に保管してあるから紛失の心配はないね。
※実際に遺言書を使用するときは、自筆証書遺言書の場合は原本を、自筆証書遺言書保管制度を使った場合は遺言書情報証明書(原本をスキャンしたもの)を、公正証書遺言書の場合は正本(原本の写し)を、それぞれ提示します。
保管場所って秘密にしておいたほうがいいのかな?
いや、秘密にしておくと自分が亡くなった後に、誰も遺言書を見つけてくれない恐れがあるよ。
せっかく書いた遺言書も、見つけてもらわなきゃ無いのと一緒だからね。
中身はともかく書いてあることと保管場所くらいは家族には伝えておこう。
ちなみに自筆証書遺言書保管制度では、自分が亡くなったときに
法務局から相続人に遺言書を預かているという通知を出すか選択できるよ。
公正証書遺言書だと、公証役場に問い合わせすれば公証証書遺言があるかどうかどうか確認することはできるけど(遺言検索システム)、
問い合わせをしない限り公証役場から連絡が来ることはないから注意ね。
それと自筆証書遺言書と公正証書遺言書の違いとして検認の有無ってのがあるよ。
検認?何それ?それ無いといけないの?
検認っていうのは裁判所に”この書面は遺言書として有効です”、っていうお墨付きをもらうもの。
公正証書遺言書の場合、専門家が作っているのでこの検認は不要な一方、
自筆証書遺言書の場合、この検認をしないといけないんだけど、これが結構面倒。
本人が亡くなった後に遺言書を見つけた人が、相続人全員と連絡を取って裁判所で中身を確認する、ってもの。
このときに遺言書が封に入っているものだとしたら、その封は開けずに裁判所で初めて中身を開封しないといけなかったりする。
中身を確認したときに、形式的要件(手書き・日付・署名押印)に不備があると遺言書として認めてもらえない。
もう書いた本人は亡くなっているで修正することもできないから無効なものになる。
じゃあ生前に確認してよ、って気持ちにもなるが、生前に検認はできないんだ。
それはちょっと心配だな。自分で書くから間違うかも知んないし…
それを回避したいなら自筆証書遺言書保管制度を使うといいね。
この制度では、法務局に預けるときに職員の人が中身を確認して
遺言書の形式的要件が満たされているか確認してくれるんだ。
満たされてないものは預かれないからね。
そしてここで預かった遺言書については検認が不要になるんだ。
面倒な手続きを避け、かつ遺言書を無効にしないためには
公正証書遺言書で書くか自筆証書遺言書を法務局に預けたほうがいいってことね。
まとめ
・自筆証書遺言書…すぐ作れる・手書きで作成・検認が必要・形式的に無効になる、改ざん、偽造、紛失の怖れあり
※自筆証書遺言書保管制度を利用すると検認不要・形式的無効、改ざん、偽造、紛失の心配なし
・公正証書遺言書…作成は公証人(署名押印は必要)、証人2人の立会・検認不要・紛失の心配なし・内容の信ぴょう性が高い
※相続で揉める可能性がある場合は、公正証書遺言書で作成しておいたほうが良い